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歩きたいKさんの話 その7

ある日、送迎から事業所に戻るとナンバー2と所長が話していました。

Kさんは足が良くなったら、旅行に行きたいとか、ダンスまたやりたいとか、夢みたいなことばかり言ってるけど、まずは両手介助卒業して、片手介助になってから言って欲しいよね。大事にハイヒール取っておいてあるのを自宅で見たことあるけど、もう履けるわけないのに。」と所長が話すのを聞いて、ナンバー2は笑いながら所長に話を合わせています。私は残酷な発言を聞いて何とも言えない無力感に襲われました。


少し前に「デイサービスに通って、言われた運動頑張ればまた元通り歩けると思ってたの。」とKさんから聞いていたので切なさ倍増です。

Kさんの努力が足りなかったという見方はあるかもしれませんが、やる気が出るか、改善の見込みがあると体感できるかについては事業所側にも責任があります。


Kさんに向いてる歩行はないかなぁ?

所長がいうような腕を振って足を上げる歩行に近づけようとするのではなくて、横揺れ歩行でも歩きやすくする工夫はないかな?と色々と考えるようになりました。一つでも自力で出来る移動手段がみつかれば残りの人生少しは明るくなるのではないかと思いながら。


Kさんはフラの経験があるから、カホロ(横歩きのステップ)は応用出来ないかな?

あ、そうだ。前に一歩踏み出すのが怖いようだから、横歩きなら怖さが減るかも?

と思いつき、参考になる情報を探そうと検索して見つけたのが、

メガネサルさんの『片麻痺の横歩き』というタイトルのブログです。


(続く)


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歩きたいKさんの話 その6

たまたまその日も帰りの車でKさんと2人で話す時間ができ、「先ほどは庇っていただいてありがとうございました。」と私から声をかけました。

KさんはNさんの悪口を一切言わず、

「私、昔から勝気なところがあってね。子供の頃、弟や妹がいじめられて帰ってくると、棒を持って仕返しに行ったりしてたよ。」と。

普段は何を言われても「みんな勝手なことを言ってくる。」と言いながら、顔をひきつらせて耐えていたKさんが私の為に反撃してくれたのです。

今も思い出すと泣けてきます。


Kさんは長女なのですが、弟さん妹さんは全員Kさんより先に亡くなられたそうです。しかも最後に弟さんが亡くなって日にちが経っていないようで、心細い様子。息子さんが1人広島にいて、近くに呼びたいけれど、中々簡単ではないとのことです。


やはりそんなKさんに「ご主人亡くなったらどうするの」などと勢いで声を掛けるのはあまりに不用意でしょう。

ナンバー2社員に「あの人達(利用者さん達)は女優だから、言うこと間に受けちゃダメだよ」と言われたことがありますが、たとえ妄想だったとしても口にする理由がある。

間に受けず、一歩引いて見ることは大切ですが、軽んじてはいけないと思うのです。


(続く)


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歩きたいKさんの話 その5

デイに長年通うぬし様的な存在のNさん。

このNさんは周りの人間の行動が気になってしょうがない方。

Kさんの行動にもしょっちゅう口を出します。


椅子に座っている時、何か落としてご自身の手で拾おうと頑張っていたら、

「誰かに頼めばいいじゃない。あなたが勝手に動いて転んだりすると迷惑になるよ!」とNさんがご意見。

Kさんは足が不自由でも本当は自分のことは自分でやりたい方。

ご自身が注意しながら、自力で動くのはものすごく大切なのに余計なことを言わないで欲しいです。見守るためにスタッフがいます。


私のKさんへの介助にもNさんが難癖をつけてきたことがありました。

何をしていた時かは忘れてしまったのですが、いつもは耐えているKさんが

「今の言い方はないでしょう!!」と激怒したのです。

部屋中の空気が凍りつき、私はKさんには「(私は)大丈夫ですから。」と頭を下げ、Nさんにも「すみません。」と反射的に謝罪。お二人も何となく落ち着いて下さり、大喧嘩にはならずに済みました。


(続く)


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歩きたいKさんの話 その4

Kさんは大人しく忍耐強い方でした。

いつも他の利用者さんとの会話に加わってましたが、Kさんが日頃ご主人に協力してもらってる話になると、周りが非難めいた発言をするのが気になりました。


別に自慢げに話していた訳でも極端に愚痴っぽく話していた訳でもありません。

Kさんは周りに聞かれたことに素直に答えていただけです。

そして話の流れで普段ご主人には面と向かって言えない愚痴をついついこぼすと周りから非難ごうごう。


女性利用者の多くはご主人に先立たれて独身生活を送られていたので、やっかみがあったような気がします。


Kさんのご主人は若い頃から家事をこなしてはいなかったようで至らぬところが結構あったようなのです。ご高齢ですし、介護のプロではないので、車椅子を押すのも上手くはない。

もちろんご主人に感謝はしているけれど、やる事が雑だったりするのは気になります。出来栄えに納得いかない時は当然あります。


それなのに「そんなに手伝ってもらっているのに文句言ったらバチがあたる」とか「ご主人亡くなったら一人で生活出来ないのだから、施設行くしかないんだよ。」とか好き勝手なことを言って攻撃します。

利用者さん達だけでなく所長も、というか、所長が率先して煽っていたことも。


所長は叱咤激励のつもりだったり、いわゆる「いじり」のつもりだったようですが、Kさんがデイで頑張る気持ちに繋がったようには思えませんでした。


(続く)


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歩きたいKさんの話 その3

仕事に慣れて来て、車でKさんの送迎をすることが増え、二人で話す時間が増えるようになりました。百貨店で働いていらした話やプライベートの話を色々と聞かせてくださいました。
Kさんは昔、フラ(ダンス)を習っていらして、私もほんのちょっとだけ習っていた時期があり、少しですが話し相手になれました。

ある時、帰りの車で他の利用者さんをお送りしたあと、Kさんだけになり、ふと思いついて、スマホでハワイアンの音楽を流しました。今は無料で「フラミュージック」などのタイトルが付けられたプレイリストがすぐ見つかります。良い時代です。

Kさんは「この曲好きだったの。」とか、「この曲、発表会で踊ったの!」などなどかなり嬉しそうな様子。

ご自宅に着くとご主人に「今、フラダンスの曲をかけてもらったの!!」と大喜び。

駆け出すことは出来ませんが、駆け出しそうなほど、嬉しそうでした。


あまり1人の利用者さんをえこひいきするようなことはよろしくないのですが、嫌々ながら頑張って通ってくださっているKさんに少しでも通う理由を見つけてもらおうと、あまり目立たないよう気をつけながら接し方を工夫しようと模索するようになりました。


心を開いてもらう為には、まずは相手を理解して仲良くならなくては、です。


(続く...このシリーズ、長くなりそうです。)


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歩きたいKさんの話 その2

お知らせ:最近結構色々書いてしまっているのですが、なるべくリアルの知人に見つけて欲しくないのでブログタイトルと名前を変更しました。手遅れかもしれませんけど。

初任者研修は受けましたが、介護職として働くのは初めてです。職場では研修は全くなく、事業所内地位ナンバー2の社員から「〇〇さん片手(介助)、Kさん両手(介助)」と書いてあるメモを1枚渡されただけで、とりあえず手を取って歩かせて移動介助をやってみろという指示。この時点ではADLについての情報は与えられません。

分からないことは聞くようにとは言われましたが、基本的に情報伝達に難アリな事業所で、何を聞けば良いかも分からないほど困惑する日々が始まりました。


就業時間後、毎日本を読んだり、ネットで情報収集しましたが、まず目にして困ったのが両手引き歩行介助についての批判。

赤ちゃんを相手にするように両手を引いて歩かせるのは安定性に欠けるし、介助者が後ろ向きなのでどうしても安全確認が甘くなるし、そして何より、本人の能力向上に全く繋がらないという話。


Kさんは怖がりで不安が強く、強めに介助者の手を掴みます。

所長は「同じ介助をしても△△さんはふんわりと手を握って来るのに、Kさんは必死で掴んでくる感じ。」と批判的に揶揄するように語ります。


仕事を始めた当初は自分の介助が下手くそだから不安にさせちゃっているんだろうなと思いましたが、それも多いにあるものの問題はそれだけではなさそうだと考えるようになりました。

(続く)


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歩きたいKさんの話

以前、デイサービス(リハビリ型)でパート勤務をしておりました。

リハビリといっても大袈裟なものではなく高齢者が簡単なマシントレーニングと体操や歩行訓練を行う施設です。(こういった施設が「リハビリ」を名乗っていいのかはとりあえず置いておいて下さい。)


そこで80台半ばの女性のKさんと出会いました。

転倒し、右側の人工股関節の手術の後、病院でのリハビリを道半ばで中止し、退院しました。環境が苦痛だったのか、どうしても自宅へ戻りたいと主張し、退院してから頑張れば良いかとご主人(90代)が判断して退院となったそうです。

退院後は痛みが残り、自立歩行が難しい状態で、自宅では手すりをつたって何とか自力で移動し、ご主人に手伝ってもらいながら食事を作り、外出時は車椅子を利用し、ご主人に押してもらいます。

ご主人は「退院させたのはオレだから。」と言って懸命にKさんのサポートをしているようです。


Kさんはデイに週二回通ってましたが、来てもかなり消極的。声をかければ動き出して下さるのですが、嫌いな運動を指示されると、この世の終わりが来たような、かなりイヤそうな表情です。

デイの中での移動はスタッフが必ず一人つき、両手引き歩行介助です。


所長(オーナー所長です)に状態についてきいてみると、「あの人はもう、脚は問題ない。やる気を出さない本人の精神的な問題。脚は上がるのだから、あとはやればいいの。」


新参者の私は所長の指示に盲目的に従う以外の選択肢はありません。とりあえず、所長の言う事が正しいと仮定し、Kさんの相手をしてみることにしました。


(続く)


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自衛官の友人の話 その4

Sくんが動物病院へ行った夜、すぐに報告が来ました。


紹介で来たことと、今回の経緯を先生に話したようですが、親切に対応してもらえたようです。


レントゲンで確認したところ、体内にガス発生。(体内に残った餌が発酵し、ガス発生。)

原因はエサのやり過ぎ。

処置は抗生物質の注射。

しっかり育ってはいるので、すぐ死ぬことはまずない。

自宅で投薬しつつ、きちんと管理を続ければ回復する。


Sくんも私もひと安心。

名医だったと喜んでくれました。

この後、どんどん回復して、1週間後に先生に診てもらって通院終了。


4回に渡り、長くなりましたが、自衛官のプライベートを垣間見たので、自分が忘れないように書いてみた次第です。

有事に自衛官が派遣されるのは彼らの仕事とはいえ、当たり前だと思ってはいけないなと改めて思いました。時にプライベートを調整したり、犠牲にしながら任務にあたっています。


先日、Xで呟きましたが、災害時被害を受けなかった人間はまずは地に足をつける。そして元気でいる。

結構大事なんじゃないかなぁと。

私のように思いがけない方向から協力依頼があるかもしれません。


(終わり)


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自衛官の友人の話 その3

亀を預かったらここ10年お世話になっている都内の動物病院(予約がなかなか取れない)へ行こうか、Sくんが戻ってから通うことを考えると、御殿場行きの帰りに厚木の病院かな?などと考えていたところ、夜になってSくんから続報が。

派遣人員の選定から外れて、自分で動けるようになったとのこと。

さらに翌朝、部隊の一部の出発に伴い、Sくんの待機制限が1時間→3時間に緩和されたとの報告。

そして「紹介して頂いた動物病院で予約とれました!」とSくんは嬉しそうです。


厚木の病院の先生については、かなり口は悪いけど、腕は確かだと伝えてありましたが、予約の電話をかけた時に先生が出たらしく、「言葉の切れ味がすごかったです[わーい(嬉しい顔)][あせあせ(飛び散る汗)]」とSくんは表現に気を遣いながら語ってくれました。

予想はしてましたがやはりやや威嚇傾向だったようです。


私が初めて行ったときは、道に迷って1時間くらい遅刻して、着いたら先生が腕組みして仁王立ちしていて「もう来ねーのかと思った[ウッシッシ]」と言われました。

ちょっとびっくりしましたが、先生自ら分かりやすいようにわざわざ外で待ってて下さったのです。

良い先生かも知れない、と本能的に感じました。

紹介するにあたり、Googleレビューを確認しましたが、大半の方は「口は悪いけど名医」ごく少数の方は「先生の態度が、酷い。あんな人がまともな診療をできるわけがない。」

私は昔と全然変わってないなー[ウッシッシ]と思い、自衛官のSくんなら叱られても大丈夫だろうと、安心して紹介しました。


(続く)


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自衛官の友人の話 その2

電話で状況を聞いてみると、自衛官らしく簡潔かつ丁寧に説明してくれました。


・まだ支援部隊のリストに載った段階であり、現地へ行くことが決定したわけではない。

・もし、決定したらHくん(埼玉在住)が8日(月)に御殿場に引き取りに行って預かる話になっている。

・亀は今のところ以前行ったことがある近くの動物病院に連れて行こうと思っている。

(待機制限があり、地元から1時間を超える場所へ行けないので近くを選ばざるを得ない。一度似たような症状で診てもらったことがあるので近くでも対応可能と思われる。)


話は前後しますが、年が明けてすぐ、餌食いが落ちていると夫に相談があり、もし獣医師のお世話になるとしたらここが良いよと夫を通じて神奈川県厚木市の山奥にある爬虫類に強い獣医さんを紹介してありました。

私が20年近く前にお世話になった信頼できる獣医師です。

Sくんの行動力を考えると行ける範囲かと思って提案しました。

Sくんはその病院に行ってみたいところだけど、制限の為行けないとのことでした。


病院はご本人の都合を優先して行って頂くのが良いのですが、もし出動となったときは?

Hくんが亀を迎えに行ったとしてもただ預かるだけでは心配です。

私と夫も我が家で預かっても回復させる自信は持てないよね、という話に。

動物病院に連れて行くフォローが必要です。


私はSくんに、

「もし、出動になったら、私と夫かHくんが亀を迎えに行って、3人で協力して獣医さんに診てもらうようにしましょう。」と言いました。

今までの経験から、実際に出動するかしないかは五分五分だそうで、私と夫とHくんの3人もドキドキしながら待機することになりました。


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